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管理職が知っておくべき発達障害の特性とカサンドラ症候群について

長く管理職を続けていると、ときに部下からの心無い言葉に傷ついてしまうことはあるでしょう。

それも管理職の役割のうちと思う反面、業務終了後や休日も心に棘が刺さったように思い出してはモヤモヤしてしまいます。

「なぜあの人はあんなことを言ったのだろう?」「自分のどの言動が悪かったのだろうか?」「私に対して他の人も同じように感じているのだろうか?」などなど。

まぁ、ここまではよくある話ですね。

この記事でお伝えしたいのはタイトルにもある通り、発達障害、中でもASDの特性と、ASDの人の周囲の人に起こる症状「カサンドラ症候群」についてです。

始めに断っておきますが、私は医師でも医療従事者でもありませんし、誰かをASDだと断定しているわけでもありません(医師ではないのでできません)。

この記事では、部下の対応に苦慮している管理職の方が「自分の苦しみはカサンドラ症候群かもしれない」と思い至るきっかけのために、書籍『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために (講談社現代新書)』の内容からASDの特性に焦点を絞って紹介します。

本書では他に、ASDの人と上手く付き合っていくための方法についても具体的な例と共に記載がありますので、興味のある方はぜひ手に取ってください。

ASDとは

ASD(自閉症スペクトラム障害)とは発達障害の一種です。

アメリカ精神医学会においては元々はアスペルガー症候群(AS)という名称でしたが、自閉症(自閉症障害)も含めて自閉症スペクトラム障害(ASD)に統一されました。一方、日本が採用しているWHOの基準ではアスペルガー症候群という用語は今も使われています。

ASDは生後2年以内に明らかになるとされていますが、「大人の発達障害」の認知の広まりとともに近年増加しています。

ASDの罹患率は、2016年の米国疾病管理予防センターのレポートによると68人に1人(1.46%)、2020年のレポートによると8歳の子供で54人に1人(1.85%)とされ、増加傾向であることが窺えます。

性別による割合は、男児の方が女児よりも4倍多いとされ、うち45〜60%は知的障害を、11〜39%は「てんかん」を併発しているとされています。

ASDの特性

ASDの特性として、本書では次のような例が紹介されています。(以下、箇条書きは引用)

  • 視線が合いにくい、視線を逸らすなど他者の表情や気持ちが理解しにくいといった症状(社会的コミュニケーションの障害)
  • 相手の立場になって考えることが苦手
  • 他人の存在を忘れてしまい、話しかけても聞こえていない(聞いていない)ように見える
  • 言葉の遅れがなくても、言葉の使い方がおかしい、字義的に捉えてしまって冗談や嫌味が通じにくい
  • 物事を決まった順序でやらないと気がすまない
  • 自分の好きな話題や活動ばかり繰り返す
  • 同時に二つのことができない、新しい環境や突然の予定変更には順応しづらく混乱しやすい
  • 自分のルールを周囲に押し付けてしまう(中略)その行動を無理やりやめさせようとするとパニックを起こし、強い劣等感や疎外感を感じてやる気をなくしてしまう
  • 多数ある中からひとつを「選ぶ」ということができないため、すべての選択結果は自分の価値観のみに依ってしまう
  • 「目的や意味が見出せないこと」「ムダと感じること」は実行しない
  • 「育てたい」とか「この人のためにやってあげたい」という感情が湧くことがない
  • 感情が爆発すると興奮が抑えきれない
  • 他人の失敗が許せない
  • 相手から自分を認める肯定的なメッセージがないと、極端に自分が否定されたように感じ、相手を敵であると判断する傾向がある

中でも感情が爆発してしまうケースでは、ASDの人が感情のままに暴言を吐いてしまっても、後になって覚えていることはほとんどなく、後悔することもほぼないと言います。

普通は自分が言ったことは覚えているものですが、受診にきたASDの人に訊いてみると、ほとんどが「覚えていない」と答えます。

このことは少なからず、ASDの人が周囲の人と関係を築く上で障害となっているように思えます。

他に、聴覚、触覚、味覚過敏を伴うケースも多く、例えば聴覚過敏の場合には、にぎやかなところに外出できず、病院に通院することすら敬遠してしまうケースもあるとされています。

また、上司と部下の関係で避けては通れない評価に関しても、次のような事例が挙げられています。

仕事のミッションや達成基準に関しても、事前に数値目標(%)を具体的に明記しておかないと、後になって「言われたことを言われた通り全部やったのに、なにが悪いんですか」と強硬に主張することがあります。
カサンドラ症候群とは

カサンドラ症候群は本書では次のように説明されています。

「カサンドラ症候群」は、もともと、ASD(以前の分類はアスペルガー症候群)の夫または妻、あるいはパートナーと情緒的な相互関係が築けないために生じる身体的・精神的症状を表わす言葉です。ASDである伴侶とのコミュニケーションがうまくいかないことから、配偶者は自信を失ってしまいがちになります。

カサンドラ症候群という名前は、ASDの夫を持つ妻が、夫とのコミュニケーションにおける苦痛を周囲の人たちに訴えても信じてもらえず、独り苦しみ悩んでしまう様を、神話において誰からも予言を信じてもらえなかったカサンドラになぞらえて付けられました。

カサンドラ症候群の元の定義は、ASDの夫または妻、あるいはパートナーに限定されていますが、本書では職場における上司や部下、同僚といった人間関係にも適用できる概念だとしています。

具体的な症状としては、偏頭痛、体重の増減、自己評価の低下、パニック障害、不眠などの睡眠障害、抑うつ、無気力が挙げられています。

カサンドラ症候群は医学的には正式な診断名ではないことに注意が必要です。しかし、精神科医の間では広く共有されている考えだそうです。

ASDの特性が見られた時の対応

注意しなければならないのは、先に挙げたASDの特性が見られたからといって、部下を勝手にASDと決めつけてはならないということです。

しかし、ひとりで抱え込んでしまうのも問題です。ひとりで抱え込んでしまった結果、上司がカサンドラになり心を壊してしまっては最悪です。

このことについて、本書では次のように書かれています。

部下がASDの例では、上司が精神的に参ってしまうケースが多く見られます。ASDについての知識がないと、これまでの常識では理解できないことが続き、心が折れてしまうのです。向き合い方がわからなくなって、逆に部下の召使いのようになってしまい、相手に奉仕するかのように一緒に伴走し始めてしまうこともあります。

部下にASDの疑いがある場合には、まず人事部などに相談し、ひとりで抱え込まないことが大切です。その上で、人事部と協力して医療機関を受診するよう働きかけるのが良いでしょう。

その他の発達障害

本書ではASD以外の発達障害として、ADHD(注意欠如・多動性障害)とSLD(限局性学習障害)についても触れられているので簡単に紹介します。

ADHDは、不注意、落ち着きがない(多動性)、よく考えずに行動する(衝動性)の3つの特性が見られる発達障害です。

SLDは、知的能力全般に遅れはないものの、「読む」「聞く」「話す」「書く」「計算する」「推論する」などの学習に関わる能力において、ひとつ以上の習得や使用に支障がある発達障害です。

発達障害は大きくASD、ADHD、SLDの3つに分類されます。

以上です。

この記事では、ASDの特性に焦点を当てて書籍『発達障害と人間関係 カサンドラ症候群にならないために (講談社現代新書)』の内容を紹介しました。

この記事が他の管理職の方々の助けになれば幸いです。