面接なにも分からない…
皆さんは「ダニング・クルーガー効果」をご存知だろうか?
Twitterでわかりやすい図を見かけたのでご紹介する。
エンジニア用語の「完全に理解した」「何も分からない」「チョットデキル」は「ダニング・クルーガー効果」で簡単に説明ができます。これは一種の認知バイアスで能力の低い段階では自分の能力の低さを認識できないためです(過大評価しがち)。その反面で能力が高くなると過少評価しがちです。 pic.twitter.com/LGaJ4E5hWo— おちゃめ (@ochame_nako) 2019年4月8日
要するに、能力が低いほど自己を過大評価し、能力が高くなるにつれて能力不足を自覚できるというものである。
そう、恥ずかしながらありました。
「面接完全に理解した」と思っていた時期が私にもありました……
「まんがでわかる コンピテンシー面接」は面接の基本を学ぶのに最適と言っていい。
これを読む前と読んだ後では、面接がまったく違って見えるだろう。
このエントリでは、「まんがでわかる コンピテンシー面接」の内容をまとめる。
コンピテンシーの前に、面接者が陥りがちなミスを見ておこう。
面接という主観評価が入り込みやすい特殊な状況において、一番警戒すべきは思い込みである。
根拠がないのに「絶対こうだ」という思い込みのことをスキーマといい、「自分はこういう人間だ」という思い込みを自己スキーマ、「あの人はこういう人間だ」という思い込みを他者スキーマという。
面接でよくあるミスとしては、自分が抱いている他者スキーマに合致しない回答は無視、合致する回答は強く記憶し「やっぱりそうだった」と判断してしまうというものである。
面接ではスキーマを持たないように細心の注意を払わねばならない。
なぜコンピテンシーが重視されるのだろうか?コンピテンシーと優秀さは何が違うのだろうか?
コンピテンシーと優秀さ(従来の視点で見た能力)は本書では次のように説明されている。
コンピテンシー(Competency)
- 自分が持つ能力を成果につなげるために
- どのようなアプローチが最も効果的かを工夫し
- それを即座に行動に移すことができる力
従来の視点で見た能力(Ability)
- 学習して獲得した知識やスキル、学力などを指す、いわゆる優秀さ
課題の難易度が低ければ知識やスキル、学力が成果に直結しやすい。
反対に課題の難易度が高いほど、持っている知識やスキル、学力がそのまま成果につながるわけではなくなってくる(工夫する必要が出てくる)ため、コンピテンシーが重要になってくる。
実際の現場ではスキルや知識、学力がそのまま成果につながるような仕事はほとんどない。
だから、それらをいかに工夫して活用できるかという意味でコンピテンシーも確認する必要がある。
もちろん、知識やスキル、学力がいらないというわけではない。
それらに加えてコンピテンシーの度合いを見極めるのがコンピテンシー面接だ。
コンピテンシーを見極めるためのコンピテンシー面接では、面接の時間を行動事実の収集にあて、判断は後回しにする。
面接では、行動事実のデータをできるだけ多く集めるための質問をする。
コンピテンシー面接は「面接」というよりも「調査」である。
- 「それはいつ、どこで行いましたか?」
質問の際には場面の特定のためにまず「1日以内に、一つの場所で行なった取り組み」を思い出してもらう問いかけをする。
「1日以内」というのは、期間がこれよりも長いと要約しなければならなくなり、抽象的な回答になってしまうためだ。
質問の仕方も大事だ。
聞き方によっては「行動の事実」ではなく、相手が「今思っていること」や「そうすべきと思っていること」が返ってきてしまう。
次のような点に注意しよう。
自分も思い当たるが、ついつい相手の答えやすさを優先して誘導質問になってしまう。
「○○ではなかったですか?」という風に。
面接者が期待する回答を相手に予測させてはならない。
「こんなときどうしますか?」という風に現在形で質問すると、応募者は「○○すると思う」というような一般論的な今の考えを話してしまう。
行動事実を聞き出すためには「どうしたのか?」という風に過去形で質問する。
「チームではどうしましたか?」という風に組織単位で聞くのではなく、相手個人がどう行動したのかを聞くために「あなたはどうしましたか?」と単数形で質問する。
どんな行動をとったのか、どんな工夫をしたのか、やったことだけでなくどのように行ったのかを聞く。
「なぜそうしたのか?」という質問で、当時どんなことを考えていたのかも質問する。
もし抽象的な回答のときは「たとえば?」という質問で具体的な事実を聞き出す。
面接が終わったら、収集した行動事実をもとに判断する。
スキーマを排除し、できるだけ客観的に評価するためだ。
判断の際には成果の大きさだけでなく、再現性のある成果かどうか(運が良かっただけではないか)を見極める。
自身の取り組みによる再現性のある成果であれば、その人のコンピテンシーのレベルによって将来に渡って成果を出してくれる可能性が高いからだ。
では、コンピテンシーのレベルとはいったいどのようなものだろうか?
本書では5段階のコンピテンシーレベルが紹介されている。
- レベル1
- 言われたことを言われたときにやる
- レベル2
- 言われたことをやるべきときにやる
- レベル3
- 今ある状況の中で、工夫を加えた行動、明確な意図や判断に基づく行動、明確な理由のもと選択した行動
- レベル4
- 状況を変化させるため、独自の工夫を加えた行動、独創的行動、状況を変化させよう、打破しようという行動
- レベル5
- まったく新たな、周囲にとっても意味のある状況を作り出す行動
レベル3とレベル4は似ているが、状況への働きかけがあるかどうかという違いがある。
つまり、成果を阻害する要因がその状況にある場合に、状況を変えて成果につなげることができるかどうかである。
コンピテンシー面接では、行動事実の多寡よりも、どのレベルの行動をとったかを重視する。
本書によると、レベル3以上が採用基準の目安になるそうだ。
また、取り組みそのものの難易度にも注意しなければならない。
学生、社会人2~3年目、管理職では当然、課題の難易度は違ってくるからだ。
「面接とは調査である」本書を読んで一番印象に残ったメッセージだ。
思い返せば面接者になりたての頃、「わかったつもり」で行っていた面接のなんと恥ずかしいことか。
穴があれば入りたいし、穴がなければ掘ってでも入りたい。
面接に限ったことではないが何事に対しても「無知の知」で取り組みたい。
以上、このエントリでは「まんがでわかる コンピテンシー面接」の内容をまとめた。
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