エンジニアリングマネージャー(EM)として7年以上エンジニアのマネジメントに携わってきた。
マネジメントにはいろいろな側面があって学ぶことも多い。
マネージャーの役割は一言で言ってしまうと組織目標の達成なのだけれど、そのためにマネージャーには育成、評価、採用の権限と責任がある。
そしてこれらのことを上手くやるためにある程度の定石、例えば傾聴やコーチング、アサーティブなコミュニケーションといった様々なテクニック(先人の知恵)がある。
これらのテクニックは書籍や研修を通していつでも学べる。
一方、EMやEMを目指す人にとって自分がEMに向いているのかどうか、マインド面に焦点を当てた指南はあまり見ないように思う。
そこで、筆者の経験からEMに向いている思われる人のマインドを3つ書いてみたい。
人が好きかどうかというのは、他人に興味を持てるかどうかということ。
今日は顔色が優れないけど大丈夫ですか?とか、出社したらきちんと顔を見て挨拶するとか、そんな些細なことだ。
顔色の変化は普段から相手のことを観察していないと気付けないし、挨拶は挨拶すること自体が相手の存在を認めていることになるからだ(人は無視されると自分の存在を否定されたと感じる)。
例えば、チームメンバーの好きなもの・ことを知っているかどうかはひとつの指標になるだろう。
Aさんにはお子さんがいて、休日はお子さんと出かけるのが好きだから、ふとした雑談のときに「この前の連休は○○ちゃんとどこかへお出かけされたんですか?」と聞いてみたり、Bさんはカニが好きだから、旅行先でカニを見たときに「Bさんに買って帰ろうかな?」と考えてみたりといったことだ。
人は自分に興味を持ってくれたり気遣ってくれる人に対しては自然と悪い気がしない。
そういったコミュニケーションが自然と発生するチームはメンバーの帰属意識が高くなるだろう。
「自分はチームの一員である」と思えるメンバーで構成されたチームとそうでないチーム、困難に直面したときどちらが強いかは明らかだ。
草木に一度に水をたくさんやっても成長が早くならないように、人の成長には時間がかかる。
また、ライフステージや家庭の状況などによって仕事や自己研鑽に使える時間は人それぞれだ。
中には圧倒的な成長スピードを認められてマネージャーになった人もいるだろうが、同じことをメンバーに求めてはいけない。
そのときのあなたにとっては成長することの優先度が高く、たまたまそれができる環境だっただけと考えよう。
見積もり工数にバッファを持たせるのと同じように、他人に対する期待にはバッファを持たせよう。
具体的には、大学の単位と同じように60点で良しとするのだ。
期待をしすぎると、期待した自分だけでなく、期待をかけられた相手もしんどくなる。
それでも難しいときは、自分の期待が高すぎないか、相手を取り巻く環境に問題がないか(必要なサポートが足りていないか)について考えよう。
決して努力不足などと相手のせいにしてしてはいけない。
人が人をマネジメントするのだから、書いたコードと違って思い通りになることなんてほとんどない。
ときには板挟みになったり、メンバーの代わりに謝ったり、心を込めたフィードバックに反発されることだってある。
ましてや自ら望んでEMになった人よりも、仕方なく、成り行きでEMになった人もいるだろう。
そんなとき、何とかしてポジティブに考えられるかどうかが重要だ。
「これはきっと意味のある試練なのだ」とか「自分はいつだってプレイヤーに戻れるのだ」とか、何でもいい。
そしてそれでも疲れてしまったら、心を壊してしまう前に辞めてしまおう。
EMとはいえ、一人いなくなったところで組織はいずれ何事もなかったかのように回っていく。
むしろ、そうなってくれるのがEMの理想だろう。
十分に休息を取ったら、環境を変えてまたEMとして働いてもいいし、マネジメント経験のあるプレイヤーとしても重宝されるだろう。
以上、この記事では筆者が考えるEMに向いている人のマインドについて書いた。
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