かつて隆盛を誇った大企業が衰退し、大規模なリストラを行うというニュースは今や珍しくない。
むしろ、大企業とはいつか衰退するものとさえ思ってしまう。
しかし、いったい何がそうさせるのだろう?
いったい何が、組織を衰退させるのだろうか?
私たちはその理由を知っておく必要がある。
組織の衰退を回避し、強いチームを作るにはどうすれば良いのだろうか?
その手がかりが「THE CULTURE CODE」にある。
このエントリでは「THE CULTURE CODE」の内容をまとめる。
組織の衰退とは、競争力の低下だ。
「競争力がある」とは、常に競合他社と比べた場合の相対評価であり、絶対評価ではない。
先に挙げた大企業のパフォーマンスは、絶対的には低下していなくとも相対的に低下した。そのことは次の一文から推測できる。
組織力では大きな差がつかなくなった。「優れた組織」はコモディティ化*1しつつある。
ここでいう組織力とは、分業の体系、権限の配置、報酬システム、レポーティングラインの設計など、要するにシステムのことだ。
システムは簡単に真似ることができる。組織力で優劣がつかなくなった今、チーム力が相対的に重要度を増している。
チーム力とはすなわち人だ。人のパフォーマンスは2倍にも3倍にもなるが、その方法はシステムのように簡単にコピーできるものではない。
強いチームを作るにはどうすれば良いのだろうか?
本書では、次の3つが鍵であるという。
- 安全な環境を作る
- 弱さを共有する
- 共通の目標を持つ
順を追って見ていこう。
チームを安全な環境にすることの重要性は、心理的安全性という言葉が Google re:Work で話題になったこともあり、納得できる人は多いと思う。
代わりに本書では「帰属」というキーワードが登場する。
ただ優秀なメンバーを集めるだけでは、チームの化学反応は起こらない。明確な帰属のシグナルを継続して受け取ったとき、チームは真の力を発揮する。
人類は誕生以来、多くの時間を群れに属して過ごしてきたし、群れを追われることは死を意味していたことは以前「話せば伝わるという誤解 ミスの指摘と生存本能」でも書いた。
帰属のシグナル、すなわち「あなたは仲間だ。群れの一員だ」というメッセージの有無を、人間は脳の原始的な部分で自動的に、常に探している。見つからなければ不安になる。
だから、メッセージのやりとりは一度ではなく継続することが重要だ。
誤解してはならないのが、馴れ合いの関係を良しとするわけではないということだ。言わなければならない厳しいことを言える関係こそが強いチームである。
そのために「誰と働くか」は重要な意味を持つ。
「帰属のシグナルを送ること」と「厳しいことを言える関係」を高度に両立している例を、史上最も成功したチームのひとつである、ラグビーのニュージーランド代表、オールブラックス(W杯2019で試合前の勇壮な舞い、ハカを目にした人も多いだろう)に垣間見ることができる。
彼らのモットーはこうだ。
「愚か者は去れ」
以前、Twitterでこんな意見を目にした。
勉強会などの発表で「緊張しています」という出だしに対して「無駄なことを言うな」というものだ。
これは本当に無駄なことなのだろうか?
強いチームを作るためには「誰と働くか」だけでなく信頼も重要だ。
そうは言っても、信頼関係を築くために具体的にどうすればいいかわからない、というのが正直なところだ。
そんな私たちにとって、次の事実は意外に映るかもしれない。
信頼しているから弱くなれるのではなく、信頼より先に弱さが存在する。
弱さを見せることで信頼が生まれるというのだ。本書にこんな例がある。
たとえばあるプロバスケットボールの監督は、シーズン最初のスピーチで、「久しぶりなのでとても緊張している」と言う。すると選手たちも、監督に共感するように笑顔になる。彼らも同じように緊張しているからだ。
例の発表者も、バスケットボール監督も、自分から弱さを共有していたのである。
とはいえ、面と向かって弱さを見せるのはたやすいことではない。気恥ずかしさが勝るだろう。
そこで、次のようなアイデアもある。
「失敗の壁」と呼ばれるホワイトボードが設置され、社員たちが自分の失敗した経験を書き込んでいる。
ホワイトボードでなくても、チームにだけ見えるようにしておけば、社内Wikiなどでも実施することができる。
チームの目指すところはチームによって異なる。
しかし一つ共通しているのは「チームの価値は何か」「存在理由は何か」「何を達成しようとしているのか」といったビジョンを、チーム全員が理解しておく必要があるということだ。
Google re:Work にはチームメンバー全員でこれらについて考えるためのセッション「チームのビジョンを設定してメンバーに伝える」が用意されているので、興味のある方はやってみてほしい(私も実際にやってみたので後日報告したい)。
話を戻そう。
実は冒頭の、競争力に関する文脈では、アイデアの良し悪しについては全く触れていない。
どんなにいいアイデアでも、平凡なチームの手にかかれば、間違いなくダメになるだろう。しかし優秀なチームなら、平凡なアイデアからいいものを作ることができる。
仮にアイデアを「原油」とすると、原油の純度よりも、最終的に得られる石油製品(ガソリンやジェット燃料など)の純度を高める精製プロセスに価値があるということだ。
これをチームに当てはめると、石油製品の純度を高めることが目標であり、精製プロセスの改善にあたって成功、失敗を判断する基準がビジョンになる。
そして当たり前のことだが、何が成功につながり、何が失敗を招くのか、具体的なことは誰も教えてくれない。
大切なものは、メンバーが自分で見つけなければならない。
だからこそ、目標とビジョンの共有が大事というわけである。
以上、このエントリでは「THE CULTURE CODE」の内容をまとめた。
- 1:市場に流通している商品がメーカーごとの個性を失い、消費者にとってはどこのメーカーの品を購入しても大差のない状態のこと コモディティ化 - Wikipedia
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